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2016年3月7日最終更新

私が名付けた魚たち


わたしはタンガニイカ湖シクリッド(カワスズメ科Cichlidae)の分類を研究してきました。 ここでは、新種として発表した種を紹介します。

 Xenotilapia rotundiventralis
 Haplotaxodon trifasciatus
 Cyprichromis zonatus
 Cyprichromis coloratus
 Cyphotilapia gibberosa
 Benthochromis horii
 Petrochromis horii





Xenotilapia rotundiventralis (Takahashi, Yanagisawa and Nakaya, 1997)
FishBase

Cichlidae; Pseudocrenilabrinae; Ectodini

この種類は以前Microdontochromis rotundiventralisと呼ばれていました (Takahashi, 2003)。 Xenotilapia属には現在17種類が含まれ、タンガニイカ湖シクリッドのなかではNeolamprologus属に次ぐ大きな属です。 Xenotilapia属の多くの種類は砂底を這うように泳ぎますが、この種類(あとX. tenuidentataも)は中層に群れを作って浮いています。 学名の"rotundiventralis"はラテン語で「丸い腹側の」という意味です。 腹びれの輪郭が丸いことから名付けられました。

Takahashi T et al. (1997) Ichthyol Res 44:109-117
X. rotundiventralis
Xenotilapia rotundiventralis
Nkumbula Is., Zambia, 2 m depth

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Haplotaxodon trifasciatus Takahashi and Nakaya, 1999
FishBase

Cichlidae; Pseudocrenilabrinae; Perissodini

Haplotaxodon属には、この種類とH. microlepisの2種類が含まれます。 ザンビア沿岸ではどちらの種類も普通に見られ、子育て中のペアを見かけることもよくあります。 学名の"trifasciatus"はラテン語で「3本の帯紋がある」という意味です。 体側にある黒っぽい横帯(背—腹方向の縞模様)が3本あることから名付けられました。 この横帯は小さい個体でハッキリしていますが、大きな個体では不明瞭になります。 写真の個体は若魚で、まだバンドがハッキリしています。 ちなみにもう一方の種類であるH. microlepisでは横帯が4本です。 両種の違いは横帯の数のほか、 体型や鱗の数なども違います。

Takahashi T and Nakaya K (1999) Copeia 1999:101-106
H. trifasciatus
Haplotaxodon trifasciatus
Nkumbula Is., Zambia, 3 m depth

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Cyprichromis zonatus Takahashi, Hori and Nakaya, 2002
FishBase

Cichlidae; Pseudocrenilabrinae; Cyprichromini

この種類は、熱帯魚関係の本などでCyprichromis sp. 'zebra'と呼ばれていたものです (Konings, 1998)。 オスの体側に数本の横帯(背—腹方向の縞模様)があるのが特徴です。 この横帯は、捕獲するとすぐに消えてしまいます。 "zonatus"はラテン語で「帯状の模様を持った」という意味です。

Takahashi T et al. (2002) Copeia 2002:1029-1036
C. zonatus
Cyprichromis zonatus
Kasenga, Zambia, 6 m depth

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Cyprichromis coloratus Takahashi and Hori, 2006
FishBase

Cichlidae; Pseudocrenilabrinae; Cyprichromini

この種類は熱帯魚業界で'jumbo'と呼ばれていました。 オスには「黄尾型」(写真上)と「青尾型」(写真下)がいて、同一集団のなかに混在します。 学名の"coloratus"はラテン語で「色のついた」という意味です。 オスの色彩が奇麗なことと、色彩に二型があることに因んで名付けられました。

Takahashi T and Hori M (2006) J Fish Biol 68B:174-192
C. corolatus(Y)
Cyprichromis coloratus黄尾型オス
Nkumbula Is., Zambia, 8 m depth


C. corolatus(B)
Cyprichromis coloratus青尾型オス
Nkumbula Is., Zambia, 8 m depth

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Cyphotilapia gibberosa Takahashi and Nakaya, 2003
FishBase

Cichlidae; Pseudocrenilabrinae; Cyphotilapiini

Cyphotilapia属にはC. gibberosa(写真上)とC. frontosa(写真下)が含まれます。 以前は同じ種類として扱われ、全てC. frontosaと呼ばれていました。 しかし、湖の北部と南部で鱗の数や体形にハッキリした違いが見つかったことから、 北部のものがC. frontosaのタイプ標本と一致したため、南部のものをC. gibberosaとして記載しました。 どちらの種類も熱帯魚として人気があり、日本の熱帯魚店でもよく見られます。 写真のC. gibberosa(上)は小さな個体ですが、大きな個体ではオデコがもっと出っ張り、写真のC. frontosa(下)のようになります。 学名の"gibberosa"は「瘤のある」という意味です。

Takahashi T and Nakaya K (2003) Copeia 2003:824-832
C. gibberosa
Cyphotilapia gibberosa
Kalala, Zambia, 20 m depth


C. frontosa
Cyphotilapia frontosa
Kigoma, Tanzania, 20 m depthで採集

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Benthochromis horii Takahashi, 2008
FishBase

Cichlidae; Pseudocrenilabrinae; Benthochromini

Benthochromis属には3種類が含まれます。 写真上のサカナは熱帯魚として流通しており、B. tricotiと呼ばれていました。 しかし、学名の基準となるタイプ標本を調べると、「本物」のB. tricotiは別のサカナであることが判明しました。 それが、写真下のサカナです。 そこで、このB. tricotiと呼ばれていた写真上のサカナをB. horiiとして記載しました。 B. horiiと「本物」のB. tricotiは同じ地点から採集され、ときには一網で両方とも獲れることがあります。 両者は体色のほか、目の大きさなどでも違います。 学名の"horii"は、京都大学の堀道雄先生への献名です。 ちなみにもう一種類はB. melanoidesといいます。

Takahashi T (2008) J Fish Biol 72:603-613
B. horii
Benthochromis horii

B. tricoti
Benthochromis tricoti

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Petrochromis horii Takahashi and Koblmüller, 2014
FishBase

Cichlidae; Pseudocrenilabrinae; Tropheini

Petrochromisは、藻を食べることに特化した種から構成される属です。 この属には7種1亜種が含まれます(亜種を種として扱うこともある)。 本種は口の位置や、体側の鱗の数などによって、同属の他の種と区別できます。 本種が未記載種であることは、京都大学の堀道雄先生が見出しました。 このため、種小名を"horii"としました。 熱帯魚として流通しているPetrochromis sp. "flame tail"は、本種のことかも知れません。

Takahashi T and Koblmüller S (2014) Ichthyol Res 61:252-264
P. horii
Petrochromis horii


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