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2013年度ティティカカ湖調査


Puno and Lake Titicaca
眼下に広がるプーノ市は、ティティカカ湖のペルー沿岸で最大の都市です。奥に見えるのはプーノ湾です。


2013年の6月中旬から7月下旬にかけて、JICAのプロジェクトでティティカカ湖に行ってきました。 ティティカカ湖はペルーとボリビアにまたがる湖でアンデス山脈の中腹にあり、世界で20ほどある古代湖の中で、もっとも高地にあります(水面で海抜 3800 メートル)。 この湖には、ここでしか見られない、固有な魚類が生息しています。 そしてその生態系は、移入種や環境汚染によって脅かされようとしています。 すでに絶滅した種もあります(Orestias cuvieri)。 しかし、どのような種が存在するかといった基礎的なことさえ、よく分かっていないのが現状です。 それを明らかにし、今後の保全に役立てることが、本プロジェクトの目的の一つです。


ティティカカ湖のさかな

Orestias
上が Oresstias agassizii、下が Orestias luteus。どちらもティティカカ湖では一般的な種。
ティティカカ湖の在来魚は、Orestias というカダヤシの仲間と、Trichomycterus というナマズの仲間の2グループだけです。

Orestias はティティカカ湖に16〜32種が生息し、そのほとんどが湖に固有です(種数は研究者によって見解が違います)。 大型の種(例えば O. luteus)では体長 16 センチ以上にもなります。

Orestias luteus
Orestias luteus の正面。
いくつかの種では横幅も広く、とても風変わりな形をしています。 我々の頭にある「カダヤシ」の概念とは、およそかけ離れた姿です。

An Orestias dish
マーケットで食べた Orestias の塩煮。ちなみに、手前のニンジンみたいなのはオカという芋です。
地元では食用です。 骨が硬くて身が少なく、私にとってはちょっと食べづらかったです。

Trichomycterus
一網で獲れた個体。上の5個体と下の6個体で模様が違う気がする。別種かなぁ。。。
湖内に生息する Trichomycterus は2種と言われていますが、1種とする研究者もいて、実態はよく分かっていません。 何れにしても、湖に固有ではないと言われています。 私が見た個体は最大で体長20センチくらいでしたが、地元の漁師さんや研究者の話しではもっと大きくなるそうです。 細長くて軟らかくてヌルヌルしています。 この魚が含まれるTrichomycteridaeをヒルナマズ科と言うそうですが、確かに手触りが蛭っぽかったです。

A trucha culture
ニジマスの養殖生簀。
ニジマス(トゥルーチャ、移入種)の養殖が盛んで、至る所に生簀がありました。 たまに生簀から逃げる個体がいるようで、湖の刺網で獲れることがあります。 しかし、生簀の外で(つまり湖自体で)個体数が増えている訳ではないようです。 湖では自力で繁殖できないのかも知れません。

Trucha in a cage
生簀のなか。
餌の残りやフンによる水の汚染が心配です。

Pejerrey
白っぽくて細長いのがペヘレイ。
ペヘレイ(トウゴロウイワシ目)が移入され、食用に漁獲されています。 在来魚を食べたり、在来魚と生息域が競合すると言われており、本来の生態系への影響が懸念されています。



サンプリング

A map of Lake Titicaca
滞在した街(プーノ)とサンプリングした場所(そのほか)。
湖の6ヶ所でサンプリングしました。 とにかく寒かったです。

Capachica Peninsula
カパチカ半島のプーノ湾側。
サンプリングは、早朝に出かけて漁師さんから魚を買うという方法でした。 漁師さんは誰にでも魚を売る訳ではなく、信頼できる人(おもに仲買人)にしか売らないそうです。 実際、私が直接「売ってくれ」と言ってもダメでした(実際は言葉がわからないので、魚を指差して「おねがい」って顔をしただけですが)。

A fisherwoman
魚を買う交渉中。
そこで、IMARPE(ペルー海洋研究所)の登場です。 ここのスタッフは毎日漁師さんから魚を買い取って調査しています。 そのため、漁師さんとの信頼関係があり、私が「この魚欲しい」というと、私に代わって交渉してくれます。 とても助かりました。 足だけで見切れている人のうち右側が、IMARPEのジャネットさんです。



さかな以外に見た動物

Guinea pig
テンジクネズミ1。
テンジクネズミ(モルモット)って、南米原産らしいです。 天竺特産じゃないんですね。

A guinea pig dish
テンジクネズミ2。
Orestias 同様、身が少なくて食べづらかったです。

Alpaca?
野良アルパカ?
アルパカだと思いますが、リャマかも知れません。 普通は羊のように群れていますが、この個体は道端に一匹でいました。 ちなみに街でアルパカのセーターと手袋を買いましたが、とても暖かかったです。 セーターは千円ちょっとでした。

Vizcacha
ビスカーチャ。アンデスウサギとも言うそうです。尻尾がクルッと巻いています。
ウサギ発見!  でも尻尾が長くてヘンな感じ。 調べてみると、ウサギじゃなくて齧歯類(ネズミの仲間)だそうです。 岩の上で日向ぼっこしているようでした。 4匹ほどいて、たまにノソノソ動いていました。

Titicaca water frog
ティティカカミズガエル。
刺し網にかかってました。

Dog
イヌ。
イヌは街中に本当に多かったです。 堂々としていました。 狂犬病に注意。



現地の様子

Low pressure
ペシャンコ。。。
冒頭にも書きましたが、ティティカカ湖は海抜 3800 メートルにあり、空気が薄いです。 持ち帰ったペットボトルの空き瓶が、写真のようになってしまいました。

Totora
トトラ。
山々と白い建物の間に見える緑の部分は陸ではなく、トトラという植物の密生地帯です。 湖の数カ所にあり、Orestias の産卵場所にもなっているそうです。

Uros
ウロス島とウル族の家々。まさに水上都市です。
プーノ湾では、トトラで浮き島を作って、その上で暮らしている人たちがいます。 浮き島をウロスといい、住んでいる人たちはウル族と呼ばれています。

An observatory
展望台1。
カパチカ半島のジャプーラという街にあった展望台。 インカらしさを残しつつも、ユルくデザインされた顔が印象的でした。

A veiw from an observatory
展望台2。
展望台からの景色。奥にティティカカ湖が見えます。

Mobile bank
移動銀行。
ジャプーラで見かけた移動銀行。 この街には銀行がないため、プーノから出張して来るそうです。

A flea market
蚤の市。
プーノでは、毎日蚤の市が開かれていました。 結構広い区域に露天がビッシリとあり、人出も多かったです。 毎日ブラブラしましたが、スリなど危険を感じることはありませんでした。 日用品を買うとき、値札がないので言い値です。 ぼられたら嫌だなぁ、と思いましたが、後で地元の人に聞いてみると、だいたい適正価格でした。 足下を見てふっかけてこないのは、旅行者にとって嬉しいですね。

A street restaurant
これは青空レストランですが、私が利用したレストランは室内が多かったです。
プーノ市街にはレストランが多く、一人のときは毎回違うところで食べました。 だいたいのレストランには Menu というコース料理があり、3〜4ソル(108〜144 円)と安く、美味しくて、お腹いっぱいになりました。 Menu の構成は、スープ(ときにはラーメンどんぶりくらいの器にナミナミ)、メインディッシュ(トリなどの肉類にイモ、ご飯、ときにパスタ)、デザート(ジュース)が一般的でした。 お客さんには現地の方が多く、外食に頼る人が多いのかも知れません。

Ccama
フリの近くのカマでは、アイマラ族にとってこの山々は神聖な場所だそうです。 ここを鉱山として開発する計画が持ち上がったとき、反対する住民がプーノで警察と衝突し、計画は中止になったそうです(耳学問なので正確ではないかも知れません)。
ティティカカ湖周辺では近年、鉱山開発を巡ってアイマラ族と警察の衝突があったそうです。 また、数年前まではコカイン(だったかな?)を生産する地域があって、警察も入れなかったそうです(サンプリングで行きましたが、目出し帽で顔を隠した人が多く、他の場所とは違う雰囲気でした)。 滞在中もプーノ市内でストやデモが頻繁に起きて、知人が怪我をしたこともありました(警察の撃った催涙弾が足に当たって病院で手当を受けたそうですが、幸い大事には至りませんでした)。 個人で接したときの印象(真面目で控えめ)と、集団での行動にギャップを感じました。



最後に

With a pig
子豚と。
今回は、JICA のプロジェクトでティティカカ湖を訪れました。 プロジェクトのメンバーは茨城大の棗田さん(隊長)、長崎大の井口さん、そして愛媛大の畑さんです。 私は先発隊で、最後の1週間に畑さんと合流しました。 棗田さんと井口さんは、8月に現地入りする予定です。 JICA の皆さん、アルティプラーノ大学のモレノ先生を始めとするスタッフの皆さん、そして IMARPE の皆さんには、いろいろとお世話になりました。 有り難うございました。



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